文明の十字路
バーミアン大仏の太陽神と弥勒信仰
ーガンダーラから日本へー
2024年4月20日(土)~6月16日(日)
アフガニスタンのバーミヤン遺跡は、ユーラシア各地の文化が行き交った文明の十字路とも呼ばれる地域です。2001年にイスラム原理主義組織・タリバンによって爆破されてしまいましたが、ここには多くの石窟と2体の大仏が彫られ、大仏の周囲には「太陽神」や「弥勒」のすがたが壁画で表現されていました。
本展ではこの失われた壁画の新たな描き起こし図や、弥勒信仰アジアアに広がる様子を多くの彫刻や絵画などから紹介します。
龍谷大学 龍谷ミュージアム
アフガニスタンのバーミヤン遺跡は、ヒンドゥークシュ山脈のただ中にあって、ユーラシア各地の文化が行き交った、文明の十字路とも呼ばれる地域です。渓谷の崖面には、多くの石窟と2体の大仏が彫られ、その周囲には、「太陽神」や「弥勒」のすがたが、壁画で表現されていました。
残念ながら、それらは
2001年3月にイスラム原理主義組織・タリバンによって爆破されてしまいましたが、かつて日本の調査隊が撮影した写真や調査資料を詳細に検討することで、壁画の新たな描き起こし図が完成しました。名古屋大学・龍谷大学名誉教授の宮治昭先生による監修のもと、京都市立芸術大学の正垣雅子先生が描いた、貴重な学術研究成果です。
本展では、この新たな描き起こし図の完成を記念してその原図を展示し、壁画に表された太陽神と弥勒の世界に迫っていきます。さらに、中央アジアで発展した弥勒信仰が、東アジアへと伝わって多様な展開を遂げる様子をご覧いただきます。
仏教紀元前5世紀頃頃、釈迦が悟りを開き、その教えを広めて始まりました。
その釈迦の姿を模したのが仏像の始まりではありますが、初期の仏教では釈迦の姿をモデルにしを型どることが厳しく禁止されていました。
ですからこの時代の釈迦への礼拝の対象は、仏伝図が作られるようになったりして、釈迦の遺徳を偲び、来来の対象にしました。また釈迦の姿を作ることは禁じられていたので、蓮華や菩提樹、法輪、仏塔、仏座や仏足石も悟りや涅槃などのシンボルとして信仰されました。
しかし時代が経つにつれ、具体的で分かりやすい姿で釈迦を表そうという要望が強くなり、ついに仏像が作られるようになります。
そしてついに最初の仏像が紀元一世紀の後半に、西北インド、現在のパキスタンのガンダーラで作られました。
ガンダーラはインドの西に位置することから、古くからギリシア神像を作っていたこの地方だから、あまり抵抗なく仏像を作るようになっていったのかもしれません。鼻筋のとおった、彫りの深い顔がガンダーラ仏の特徴です。全体的にギリシャ美術の影響が強く、西洋的な容貌です。また、後に一般的にみられるような仏像独自のデフォルメはなく、リアルな人物像といえるでしょう。
さて、初期の仏像は釈迦如来像だけだったが、大乗仏教が紀元前後に興ると様々な仏の存在が考えられるようになります。釈迦が出現する前にも多くの仏がいると考えられるようになりました。そして、未来にも仏が現れて人々を救ってくれると考えました。釈迦が亡くなってから五十六億七千万年後にこの世に現れると信じられている弥勒菩薩があります。
そしてこのような過去仏や未来仏のほかにも、現在同時に多くの仏が存在していると考えられるようになり、われわれが住む娑婆世界以外の、阿弥陀如来の西方極楽浄土のように十方の世界にも同時に存在する仏が考えられました。
中央アジアでは、最初に仏像が作られたガンダーラ地方を経由して仏教が伝えられました。七世紀にインドに経典を求めて、この地方を旅した玄奘三蔵は『大唐西域記』という旅行記の中で、中央アジアにはたくさんの国があり、そのほとんどが仏教国であると書いています。
しかし、その後多くの国が滅び、仏教遺跡は長い間、砂漠に埋もれていたが、最近、これらの遺跡が次々発掘されています。
中央アジアはシルクロードの要衝で、東西文化の十字路と呼ばれるだけあって、遺跡の仏像や仏画にも東西の文化交流の痕跡をとどめています。中にはキリスト教の影響を受けたとみられる翼の生えた天使像などもみられます。
また、中央アジアには岩壁をくり抜いて造った石窟寺院が多くみられ、内部の壁画には多くの壁画が描かれ
ています。敦煌やキジル千仏堂の壁画は有名です。さらに雲崗やバーミヤンの石窟には岩をくり抜いた巨大なバーミアンの摩崖仏(2001年、イスラム原理主義のタリバンによって破壊された)摩崖仏が彫られた。
日本でも早くから弥勒菩薩は信仰され、多く造像され、弥勒のいう兜率天に上生することを願い、また弥勒菩薩下生の暁には、龍華樹下三会の法莚に列することを期待しました。金峯山が弥勒下生の地であるという信仰から、盛んに當来仏出世まで残そうとする埋経(土中に経典仏具などを埋蔵する)が流行したりしました。
死後、兜率浄土に上生して、弥勒の化導の預かろうとする信仰は古く、阿弥陀仏の極楽往生に先立って行われたようで、わが国では浄土思想の流行に対抗して、貞慶(1155‐1213)、明恵(1173‐1232 )らによって鎌倉時代に説かれ、弥勒来迎図や兜率天曼荼羅図、弥勒菩薩来迎図などの制作が行われました。
その姿は、椅子に座った格好で右足を左足の上で組み、右手の指、甲を頬に軽く触れ、物思いにふけっているような姿(半跏思惟像)が有名ですが、それは平安時代以前に造られており、それだけでなく、平安時代以降は坐像や立像、手の印相なども異なったもの、宝冠や首飾りをつけた菩薩像や質素な衣しか身に着けていない如来の姿など様々あるのが弥勒菩薩です。
(文 KOBE MEET TRIP 佐伯浩道)
【開催概要】
会期 2024年4月20日(土)〜2024年6月16日(日)
会場 龍谷大学 龍谷ミュージアム
住所 600-8399 京都府京都市下京区堀川通正面下る(西本願寺前)
時間 10:00〜17:00(最終入館時間 16:30)
休館日 月曜日(ただし、4月29日(月)、5月6日(月)は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
入館料 一 般 1,600(1,400)円、高大生 900(700)円、小中生 500(400)円
小学生未満:無料
障がい者手帳等の交付を受けている方及びその介護者1名:無料
(手帳またはミライロIDを受付にてご提示ください)
※( )内は前売り・20名以上の団体料金
TEL075-351-2500
URL 展覧会特設ページ
https://museum.ryukoku.ac.jp/exhibition/2024/bunmei/
SNS https://twitter.com/ryukokumuse
主催 龍谷大学 龍谷ミュージアム、京都新聞、読売新聞社
特別協力 浄土真宗本願寺派、本願寺
協賛 (公財)仏教伝道協会
後援 京都府、京都市、京都府教育委員会、京都市教育委員会、(公社)京都府観光連盟、(公社)京都市
観光協会、NHK京都放送局、KBS京都、エフエム京都
協力 龍谷大学親和会、龍谷大学校友会
関連イベント/音声ガイド
【関連イベント】
<記念講演会>
※事前申し込み必要(龍谷ミュージアムHP内「お申込みフォーム」から)/ 聴講無料 / 先着150名 /観覧券必要(観覧後の半券可)
「釈迦・転輪聖王・弥勒の信仰と美術-ガンダーラから中国へ」(仮)
日 時 4月28日(日) 13:30 ~ 15:00
講 師 宮治 昭(元龍谷ミュージアム館長)名古屋大学・龍谷大学名誉教授
会 場 龍谷大学大宮キャンパス東黌101教室
「ミロクさんに会いたい!ー兜率天への思いと東アジアの造形ー」
日 時 5月12日(日) 13:30 ~ 15:00
講 師 泉 武夫 東北大学名誉教授
会 場 龍谷大学大宮キャンパス東黌101教室
「バーミヤン二大仏の仏龕壁画-太陽神ミスラと兜率天の弥勒」(仮)
日 時 6月2日(日) 13:30 ~ 15:00
講 師 宮治 昭(元龍谷ミュージアム館長)名古屋大学・龍谷大学名誉教授
会 場 龍谷大学大宮キャンパス東黌101教室
<スペシャルトーク>
※事前申込不要 / 聴講無料 / 先着30名 / 観覧券必要(観覧後の半券可)
講義室で学芸員が展覧会の見どころを解説します。
日 時 5月18日(土)/ 5月25日(土) 13:30 ~ 14:15
会 場 龍谷ミュージアム1階 101講義室
【音声ガイド】
ナビゲーター : 保志 総一朗(ほし そういちろう)さん
アニメ『機動戦士ガンダムSEED』(キラ・ヤマト役)、TVアニメ「異修羅」(鵲のダカイ 役)をはじめ、アニメ、ゲーム、洋画吹き替えのほか、ラジオ、CMなど幅広く活躍されている声優・歌手の保志総一朗さんが、作品の魅力をご案内します。
レンタル料金 700円(税込)
解説時間 約30分間
貸出場所 地下1階エントランスホール 音声ガイド貸出コーナー
ナビゲーター : 保志 総一朗(ほし そういちろう)さん
企画・制作:株式会社カセットミュージアム